2006年08月09日

◆夏の行事、お盆・盂蘭盆会(うらぼんえ)(九)

◆夏の行事、お盆・盂蘭盆会(うらぼんえ)(九)


◆夏の行事、お盆・盂蘭盆会(うらぼんえ)(九)

◆◇◆「お盆」「盂蘭盆会(うらぼんえ)」、日本人の宗教観、農耕民族と農耕儀礼

 日本は農耕民族であり、生業儀礼=農耕儀礼となっていることが多いようである。農耕儀礼は、世界的にみて復活と豊饒の儀礼だ。農業儀礼の特徴として、収穫サイクルがきっちり一年であることがあげられる。しかも、年中行事という形で、農業のサイクルに応じて多数の農耕儀礼が現在も残っている。

 日本の場合、さらに農耕儀礼=稲作儀礼になっていることが多いようである。小正月の予祝儀礼(※注1)のほか、田植え近くには田の神を祀る行事があり、水口祭(種まきのときの祭り)とか社日(春分・秋分の日に最も近い戊の日のこと、春秋の神の去来をみる日)、田の神降りなどが行われ、植物が育つ夏には病虫害を防ぐ虫送り、人形送りなどが行わる。

 ところが、七夕とお月見は、稲作儀礼ではなく、畑作儀礼出身の行事のようである。稲作の収穫儀礼は十月十日頃(旧暦)に行われる刈り上げ祭りというものらしいだが、お月見に比べ一般的ではない。

 中秋の名月は八月十五日(旧暦)の月のことで、芋名月と呼んで畑で取れた作物を月に供える。九月十三日(旧暦)の栗名月(豆名月)には栗などを供える。中秋の名月は里芋の収穫祭と考えられているが、九月十三日の十三夜(後の月、栗名月、豆名月、女名月とも呼ばれて、十三夜の風習は中国にはなく、日本独自のものである)も、民間では収穫祭が行われる。

 日本の農耕関連の儀礼は正月ではなく、旧暦一月十五日の小正月に集中している(※注2)。十五日(望月)は、太陰暦では満月であり、農耕儀礼が多く行われる。暦の上で正月と対になるのは、通常お盆と考えられていますが、大陸の方では中秋である。

 どちらも旧暦十五日、満月の日である。月見については、いまでは中秋のものだけが特別扱いされるだけだが、もともとは毎月の満月が特別な節目(祭り、ハレ)で、民衆にとっては、毎月の中心は満月の夜であったのだ。

※参考Hints&Notes(注釈)☆彡:*::*~☆~*:.,。・°・:*:★,。・°☆・。・゜★・。・。☆.・:*:★,。・°☆

(※注1)予祝儀礼とは、年初などに神霊に豊かな収穫を祈願するものである。小正月に、麦の畝を三列作って松を立てて拝む、麦団子を作って食べる麦正月などが知られていた。また九州など南方では里芋を神棚に供えるなど、里芋の儀礼が多く伝わっている。これら農業関連の予祝儀礼は、元旦ではなく、満月にあたる小正月に多いのが特徴である。

 この予祝儀礼に対応する、秋の収穫儀礼が盆と中秋の名月にあたる。いずれも満月の日だ。旧暦八月十五日は米の収穫にはちょっと早いようだが、もともと南方の里芋の収穫儀礼の日時である、という大林太良氏らの有名な説が最近は主流となってきている。

 稲作の収穫儀礼は十月十日前後の刈り上げ祭が祭りらしいのだが、畑作の収穫儀礼である中秋の名月や盆に比べるとどうも一般的ではない。

(※注2)朔正月を大正月というのに対して、十五日正月を小正月という。大正月が公式の儀礼ばった行事が多いのに対し、小正月は生活に即した行事が多いようだ。昔の生活は、月明かりを利用することが多かったからか、闇夜の大正月より望(もち=満月)の小正月の方が親しみやすく、大昔の生活の上ではむしろ小正月が年の境目であったのではないかともいわれている。

 小正月に行われる行事は、削りかけ、成らせ餅などのモノツクリ、農耕を模して豊作を予祝する庭田植え・成り木責め・鳥追いのほかに、小豆粥を食べ、夜はナマハゲなどの異様な訪問者があったり、これらはすべて農耕儀礼と見ることができ、年占や呪術的な要素が強いことが注目される。


スサノヲ(スサノオ)

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Posted by スサノヲ(スサノオ) at 15:15│Comments(0)スサノヲの日本学
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